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2016年11月10日 (木) | 編集 |
総二郎に家元が迫ります。
 
 




口切の茶事まであと二週間ほどに迫ったある日、俺は家元に呼び出され屋敷の中でも格式が高い茶室にいた。
この茶室を使うという事は重要な話があるという事。
そして家族ではなく、西門流の家元としての話があるという事を示していた。


「総二郎、予てから言っていた通りに口切の茶事の後にお前を次期家元の正式指名する事について話し合う。それまでにお前にしっかりと聞いておきたい」

「なんでしょうか?」

「今からお前の気持ちの最終確認をする」


最終確認?


「答えの変更は出来ないから慎重に考えて口にする事。いいな?」


家元の問い返す事を許されない強い視線と口調に俺は頷くしか出来ない。


「お前は本当にこの西門流は継ぐ覚悟があるのか?」


今さら何を言うんだ?
兄さんが家を出て否応なしに次期家元候補として扱ってきたくせに。
二男として気楽に生きてきた俺が、ある日いきなり次期家元の自覚を持てと言われて今日ここまでやってきたんだ。

それを何だと思ってる。


「お前の言いたい事は解っているつもりだ」

「…………」

「お前がある日突然押し付けられたも同然で次期家元としての立場にならざるを得なかった。自分の意志ではなく逆らえない状況で……」
「今のお前の立場は不本意ながらに始まったものだ。このままいけば死ぬまで西門流の家元、元家元という責務から逃れられない」

「何が言いたいんですか?」

「逃げたいか?この西門流から」


逃げる?
どういうことだ?


「西門流の家も柵も何もかも全て捨てて、ただの総二郎として生きていくことも出来る。どうする?」
「その場合、財産分与はするが西門流に関する権利は一切放棄してもらうし、一生涯茶道に係る事は禁止だ。この家の敷居を跨ぐのは許されない」


痛いほどに張り詰めた空気の中、風炉の釜が煮えつく音が不思議に大きく聞こえてくる。

本当に今さらだよな。
産まれた時から兄さんの影として生かされてきた。
全ての期待は兄さんにかかり、俺には何も期待しないのにも拘らず茶道だけは厳しく仕込まれた。

決して出過ぎる事なく家元になる兄をサポートするのが俺の役割り。

そんな自分の立場を自覚し始めた頃に兄さんがこの家を出て行った。
俺に全てを押し付けて。
最初の数年は戸惑い、自分の運命を恨みもした。

だがいつの頃からか自分の心が変化していくのを不思議な思いで感じていた。
決して嫌な変化ではなかったからそれを受け入れた。
むしろ心地よいとさえも思う自分がいた。


家元が茶を点てる音が聞こえる。
釜の蓋を切る音、柄杓で水を注す音、湯水を汲み入れる音、釜に返す音、茶筅の振られる音……それらが俺を包み込む。

子供の頃から俺に馴染んでいる音は俺の心を落ち着かせる。

眼の前にすっと音もなく差し出された茶碗。
泡で作られた見事な三日月の景色。


「心は決まったか?」


不思議だ。
これから発する一言で俺の人生が決まるというのに、心が波ひとつない湖面の様に落ち着いている。

これが明鏡止水の心境なのか?


「俺は……いや、私は西門流の西門総二郎として生きていきます」


そう家元に告げ、茶をゆっくりと飲み干す。


「それがお前の出した結論でいいのだな?」

「ああ、俺は一生この西門流の中で生きていく」

「解った。そのつもりでこちらも準備する」
「次の日曜だがお前に会わせたい人がいる。このれからの西門流とお前にとって必要な存在になる人だから失礼のないように」






茶室で座っているだけなので、動きが無く会話ばっかりになってしまった。


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